2002年1月1日火曜日

指揮者 朝比奈隆氏 亡くなる

今年の最後の最後になってだ、29日に朝比奈隆が亡くなったという報を新聞で知った。93歳で現役であったということも驚きではあったが、日本からもう二度と生まれることはないだろう巨匠が逝ってしまった。

私は熱心な朝比奈教徒でも、ブルックナー信者でもないが、ブルックナーの面白さを教えてもらったのは他ならぬ彼のCDであったことは疑いようもない。

私が朝比奈を知ったのは、ほんの数年前だ。まだ Nifty-serve のクラコンが全盛の時代だ。Nifty のクラコンというのは、いわゆるインターネットの普及する以前、のちに Fcla に解体されたこのフォーラムは、パソコン通信におけるクラシックファンサイトとして最大級のものであった。そこでは定期的にブルックナーと朝比奈の演奏が話題にあがっていたものだ。

「ブルックナーを聴き始めるには何番から聴けばよいか?」「ブルックナー指揮者としては誰を推薦するか」といった、定期的にあげられる質問から、朝比奈の追っかけのレビュ、アンチ朝比奈の意見など多くの意見に接し、先入観なしに彼の演奏を聴くことなどできなかいほどの情報量だった。彼の徹底的名演と言われる75年のザンクト・フローリアンでの交響曲第7番など伝説と化すほどの扱いであったと思う。

このザンクト・フローリアンの演奏、賛否はあろう。私も知識だけを先に詰め込まされて聴いた。しかしそれでも、2楽章終了時に偶然に聴こえてきた鐘楼の音色・・・この音を聴いたときに、全身が粟立つような感動を覚えた。それはあながち気のせいや先入観だけのせいではないと思う。ブルックナーの壮大さが目の前に立ち上がったように思えたものだ。

彼によりブルックナーに開眼したとは言っても、彼の録音は膨大すぎて、トーシローの私になど何がなんだかわからない。従って何を買ってよいのかも分からず、ほとんどCDは増えていない。

朝比奈といえば、1997年3月のN響とによるブルックナー8番も名演のひとつとして挙げられるらしい。私はこの演奏を聴いてはいないが、あるとき、元N響の首席フーティスト小出信也さんにお会いする機会があり、あの演奏のことを尋ねてみた。すると小出さんは、あまりの素晴らしさに演奏しながら涙していたと答えてくれた、それほどの演奏だったらしい。

色々な伝説を残して、巨匠は去ったという思いを改めてかみ締めるのであった。



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