2003年1月28日火曜日

《指環》の成立年代について

ワーグナーの壮大なる四部作《ニーベルングの指環》の成立年代について知っておいて損はない。調べてみると以下のようになった。年表によると1948年、35歳のときに「ジークフリートの死」として着想したテーマが、最終的に結実し全曲が演奏されるまで実に26年以上の歳月を要していることが分かる。

ワーグナーにとってエポックメイキング的な《トリスタンとイゾルデ》が完成したのが1859年のこと。《指環》の作曲は《トリスタン》の前後に渡っているが、《トリスタン》以前に作曲されたものが《ラインの黄金》と《ワルキューレ》、以降に作曲されたものが《ジークフリート》と《神々の黄昏》ということになっている。

それにしても、ワーグナーが書きたかったのは事象としての「ジークフリートの死」(《神々の黄昏》とそれにまつわるドラマであったらしい。それを物語として肉付けするに当たり、ジークフリートの人間としての成長を描いた《ジークフリート》が成立し、更にジークフリートの誕生に至る物語《ワルキューレ》を生み(ジークムントとジークリンデの近親相姦による禁じられた愛の物語)、そして更にはジークムントとジークリンデを生み出すことになった前史としての《ラインの黄金》(ラインに眠る黄金の物語)が着想らしい。作曲は年代を追っているが、着想は劇順と逆になされたわけである。何ともはやワーグナーの誇大妄想的なイマジネーションの膨らみには恐れ入るばかりである。














































































































































年代ニーベルングの指環その他の作品と主な出来事
1842(29歳)《さまよえるオランダ人》完成
1843(30歳)《さまよえるオランダ人》ドレスデンで初演
1845(32歳)《タンホイザー》総譜完成、ドレスデンで初演
1848(35歳)《ジークフリートの死》(《神々の黄昏》の原型)の劇詩完成《ローエングリン》完成
フランスで2月革命
1849(36歳)ドレスデン蜂起に参加、「未来の芸術作品」脱稿
1850(37歳)《ローエングリン》ワイマールで初演
1851(40歳)《若きジークフリート》(《ジークフリート》の原型)の劇詩成立

《ラインの黄金》《ヴァルキューレ》の劇詩のための最初の散文スケッチ完成
論稿「歌劇と戯曲」を完成
1852(39歳)《ヴァルキューレ》の第2の散文稿および劇詩完成

《ラインの黄金》の劇詩完成
1853(40歳)《ラインの黄金》の管弦楽前奏曲を構想
1854(41歳)《ラインの黄金》総譜完成

《ヴァルキューレ》の作曲開始
1856(43歳)《ワルキューレ》総譜完成
《ジークフリート》作曲開始
1857(44歳)第2幕の終わりで《ジークフリート》作曲中断《トリスタンとイゾルデ》の筋をスケッチ、劇詩執筆、作曲開始
1859(46歳)《トリスタンとイゾルデ》総譜完成
1860(47歳)《タンホイザー》パリ版完成
1861(48歳)パリ オペラ座で《タンホイザー》上演
《マイスタージンガー》の第2散文稿完成
1862(49歳)《マイスタージンガー》の劇詩執筆、作曲開始
1865(52歳)《トリスタンとイゾルデ》ミュヘンで初演
《パルジファル》台本の最初の散文稿完成
1867(54歳)《マイスタージンガー》総譜完成
1868(55歳)《マイスタージンガー》ミュンヘンで初演
1869(56歳)《ジークフリート》の作曲再開
《ラインの黄金》ミュヘンで単独初演

《ジークフリート》総譜完成
《神々の黄昏》作曲開始
1870(57歳)《ワルキューレ》ミュヘンで単独初演
1871(58歳)《ジークフリート》完成
1873(60歳)バイロイト祝祭歌劇場完成
1874(61歳)《神々の黄昏》総譜完成
1876(63歳)《指環》全曲がリヒターの指揮でバイロイトにて初演
1882(69歳)《パルジファル》総譜完成、バイロイトにて初演
1883(70歳)ヴェニスのヴェンドラミン館にて死去


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