2007年11月19日月曜日

ブラームス:交響曲第4番/クナ&ケルン放送響








  1. 第一楽章 Allegor non troppo 12'51
  2. 第ニ楽章 Andante moderato 11'41
  3. 第三楽章 Allegro giocoso 6'55
  4. 第四楽章 Allegro energico e passionato 9'53


  • Hans Knappertsbusch(cond)
    Ko"lner Rundfunk-Symphonieorchester
  • 1953.5.8
  • C723071B



クナのブラームス4番がORFEOから発売になっていました。クナのブラ4の録音は1952年のブレーメン・フィルとのものと、本盤1953年のケルン放送響の2種類があるらしく、これは後者の版。詳しくはSyuzo's Homepageの「クナを聴く」を参照されるのが良い。


というか、syuzoさんのレビュ以上のことは書けないのですが、とにもかくにも、このブラ4には心底たまげました。syuzoさんも第1楽章だけで満腹してしまうような演奏と書かれているように、第一楽章から重心は低く、凄まじい音楽が鳴っています。



特に、驚いたというか、ブチのめされたのは何と第二楽章。これ程の第二楽章を、かつて聴いたことがありません。分厚いというのでは言足りない度厚さ。そこに漂う一瞬恐怖さえ感じるほどの迫力。それに反する、チェロが歌う劇的なまでの浪漫と美しさと哀しさ。楽章終わり(8'10)近くでの弦楽合奏の恰幅たるメロディの素晴らしさ。ブラ4の第二楽章から、これ程の音楽を引き出せるものとは。


そのままの迫力で始まる第三楽章冒頭では肝を潰します。巨大な質量を持った音塊を硬質な壁にグシャリとぶつけたような音。粗く朴訥であり、そして半ばヤケではないかとさえ思える金管の音。皮が、いや底が抜けるのではないかという打楽器の強打。これらには背筋が寒くなる思いを感じながらも、それら全てが渾然となって、ある説得力を持って迫ってきます。重い演奏です、粗いといえば粗い。しかし、ピアニッシモからフォルテッシモまで、実は巧みにコントロールされています。小細工は一切なく、言葉を越えた音楽が身体を蹂躙します。


終楽章は痛いほどの音楽が鳴り響きます、悲劇的な英雄の肖像でしょうか。syuzoさんが闘争的音楽と評したのには同意します。戦い前の内なる闘争心を全身に漲らせ、その暗いエネルギーを一体にどこに放散させようとしているのでしょう。しかし、この演奏のフィナーレに解放と解決はありません。


かのグスタフ・マーラーは、この曲を「空っぽな音の桟敷」と評しました、相変わらず作曲当時は評判がよろしくなかったようです。クナはそこに、恐ろしいほどの密度で、かつて聴いたことのないほどのエネルギーを注ぎ込んだように思えます。この熱情は何によるのか、まともでは受け止め切れません。

2007年11月10日土曜日

ついでにラトル&ツィマーマンのブラームスPコン1番を聴いてみる


ブラームスのピアノ協奏曲といえば、ラトルとツィマーマンがCD棚にありました。2005年発売で、以前感想を書いていたと思ったのに何も記していなかったようです。改めて簡単なインプレッションなどを。




ブラームス:ピアノ協奏曲第1番

ツィマーマン(p) ラトル(cond) ベルリンpo 2003

00289 477 6021





ツィマーマンにとっては1984年のバーンスタインとの演奏以来実に20年ぶりの演奏です。ライナーによりますと前回は万全の録音とは言えなかったようです。楽器は運送の事故で、とてもブラームスに適したとはいえない楽器となり、しかもビデオ録音のため各種機材の溢れかえったホールは、音響的にも悪影響であったのですとか。


"For the recording of the First Piano Concerto I was unable to get the instrument I wanted, as the van that was supposed to bring the piano from Italy was involved in an accident. The instrument that was finally placed at my diposal may well have been good for Mozart, but not for Brahms."


ツィマーマンの侮恨が伺えるコメントです。今回のレコーディングについて何を考えるかとの問いに対しては、


"Every recording documents a single moment."


と言い切る彼ですが、相当の思い入れで本録音に取り組んだことは確かなようです。当然自ら調整した"his own piano"を持ち込んでの演奏です。80以上の異なる演奏を聴き比べ、テンポ設定の研究も行ったのですとか。


"By this I dont't mean a metronomic tempo;rather,it's something subjective,something that I might call the psychological perception of a tempo."
"Everything must cerate the impression of a uniform flow."


そういう点から、非常に気合の入った演奏が聴かれます。アマゾンとかHMVのレビュでもカスタマーズ・レビュ絶賛されているようです。バックのベルリン・フィルはオケの精度も良く、確かに現在望みうる最高の演奏だと言えるかもしれません。


ラトルは相変わらずティンパニを際立たせた、ハリのある演奏に仕上げています。ホールの響きも良くバランスも良いです。ピアノは激しいところでも決して濁らずに際立ち、それでいて凄まじく、弱音部の音色も鮮やかにして美しい。ラトルの指揮下というせいもあるのか、演奏は洗練されており、ガッチリとした骨格を示し、タフであり、ベタさはありません。第二楽章冒頭のオーケストレーションなどは映画音楽!のように美しい。反してツィマーマンのピアノは、少々くぐもり内省的な響きを聴かせます。ブラームスの憂愁というより、もっと現代的なリリカルさを感じる部分です。終楽章の炸裂も鮮やかの一言。


さて、それでは、この演奏の感想が最上かと言えば、何度この演奏を聴いても心情に訴えてこないというか、ある線より上には響かない。いや、とても、とても素晴らしい演奏です、生で聴いたら、おそらくぶっ飛ぶと思いますよ。しかし、何でしょうね、このモノ足りなさは、私が古い人間なんでしょうか。

2007年11月9日金曜日

ベルマンの「悲愴」を聴いてみたが

ベルマンの演奏は、ロシアン・ピアニズムの継承者などと称されています。「ロシア・ピアニズム」という本もありましたが、では一体にその本質は何かといったら、私のようなトーシローには漠たるイメージしかありません。

ロシアン・ピアニズムとは何かという点についてのネット上の知識といえば、「おかか1968」ダイアリーで2006年から不定期連載された『【不定期連載】全く役に立たないロシアピアニズム・ガイド*1)』が一番詳しいのかなァなどと思いながら、ラザール・ベルマンが弾くベートーベンのピアノ・ソナタ第8番を聴いたりしています。(ブラームスのカップリングだったから)

ベルマンのベートーベンはあまり俎上にのぼらないようですが、この演奏も清冽なテンションがピンと張り詰めた好演であると思います。第一楽章は激烈な音楽でさえありますが、ゆるぎないテクニックとそれをベースにしたドライブ感に、冷ややかさと計算を感じます。第二楽章のカンタービレも甘すぎない。第三楽章冒頭のフレーズの出だしはあまりに美しく、乾いた冷たい粉雪がサッとばかりに舞うかのよう。だんだんとそれが吹雪になっていき、最後の打鍵はダンッとばかりに強烈。カーネギーの割れんばかりの拍手にも納得。続けて4度も聴いてしまった・・・。

ベルマンといえば、リストとかラフマニノフとかチャイコフスキーのバリバリな演奏が有名なようです。実は全く未聴なそれらの演奏も、聴いてみたいと思わせるのでした。




ブラームス:ピアノ協奏曲第1番

ラザール・ベルマン(p) ラインスドルフ(cond) シカゴ響 1979

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」

ラザール・ベルマン(p) 1979 カーネギー・ホール・ライブ

SICC 824



  1. 参照URL→http://okaka1968.cocolog-nifty.com/1968/2006/08/post_c30c.html

2007年11月6日火曜日

秋ということでブラームスPコン1番を聴いてみる


秋になり、活動も書き込みも低調になりがち。そういうときは秋らしくブラームスでも聴きたいという気になってきます。11月4日響アワーではエレーヌ・グリモーのピアノによるピアノ協奏曲第1番の1楽章が放映されました。指揮はアシュケナージで、貧弱なTVのスピーカーを通しても結構な熱演と聴こえ、第一楽章が終わって拍手が生じるというのは、いかにもアメリカ的であるなァと思ったものです。


私のCD棚にはブラームスPコンのラインナップがほとんどありませんので、池袋HMVに行ってSONYの廉価版シリーズから標記の盤を購入して数度聴いてみました。リファレンスと言えるほどの盤がないので、とやかく書くこともないのですが、この曲は改めて名曲だなとの感を新たにしました。



ブラームス:ピアノ協奏曲第1番

ラザール・ベルマン(p) ラインスドルフ(cond) シカゴ響 1979

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」

ラザール・ベルマン(p) 1979 カーネギー・ホール・ライブ

SICC 824





曲は1958年、ブラームス25歳の作。曲が出来るまでには紆余曲折があったのは有名なハナシ。無骨なところもありますが、この曲に込められた多くの感情と抒情と激情は聴いていて飽きることがありません。20分近くもある第一楽章はやっぱり圧巻で、オケと張り合うかのようなピアノの強打と流れるような旋律はまさにブラームス。展開部の前に現れるホルンの音色などはライン河の流れる風景を彷彿とさせてくれます、勝手な解釈ですけどね。


ベルマンはロシアン・ピアニズムの継承者としてリストやラフマニノフで有名ですが、本盤のブラームスでも彼の鍵盤は冴えているようです。抒情に傾きすぎずに旋律を歌い上げるところは好ましくウェットに流れないのはベルマンの特質なんでしょうか。聴き疲れはなく、よい意味で繰り返し安心して聴ける演奏です(実際買ってから5度くらい聴いた)。


ベルマンのピアノをYou Tubeでいくつか検索してみると、ラフマニノフやリストの作品をいくつか聴くことができます。これはこれで、素晴らしいですね。